
コラム
2026.08.24保育ドキュメンテーションとは?子どもと先生の「ワクワク」を次の保育につなげる作り方・実践例

「先生、見て!」
「これ、どうなるかな?」
「もう一回やってみよう!」
子どもたちの毎日には、たくさんの「ワクワク」があります。
夢中になっている表情。
何かを発見した瞬間。
友だちの姿をじっと見つめている時間。
うまくいかなくて、何度も試している姿。
そんな子どもたちを見ていると、先生も、
「おもしろい!」
「こんなことを考えていたんだ!」
「明日はどうなるんだろう?」
と、ワクワクすることがありませんか?
その瞬間を写真や言葉で残し、もう一度見つめてみる。
そこから子どもの育ちや学びを発見し、先生同士や保護者と共有し、次の保育へつなげていく。
それが、保育ドキュメンテーションの大きな魅力です。

写真と手書きの言葉で、子どもたちの遊びの広がりを記録。ドキュメンテーションの形は園によってさまざまです。
「ドキュメンテーション」と聞くと、
「難しそう」
「何を書けばいいかわからない」
「作るのに時間がかかりそう」
と思う先生もいるかもしれません。
でも、実際の園を訪ねてみると、その形は驚くほど自由でした。
写真1枚と文章で残したもの。
子どもの試行錯誤を何枚もの写真で追いかけたもの。
スケッチブックいっぱいに広がる記録。
子どもの興味と保育環境をマップにしたもの。
活動とともに、どんどん書き足されていくもの。
そこから伝わってきたのは、
「記録を作らなくちゃ」
という堅苦しさよりも、
「子どもたちって、おもしろい!」
という先生たちの楽しさでした。
この記事では、保育ドキュメンテーションとは何かという基本から、メリットや作り方、実際の園で見つけたさまざまな実践例までご紹介します。
そして最後には、私がその園で感じた、
「子どものワクワク+先生のワクワク」
についても考えてみたいと思います。
1.保育ドキュメンテーションとは?
保育ドキュメンテーションとは、子どもの活動や遊びを写真や言葉などで記録し、そこにある育ちや学びのプロセスを見えるようにする方法です。
神戸大学大学院人間発達環境学研究科の北野幸子教授らと神戸大学附属幼稚園、スマートエデュケーションによる共同研究でも、ドキュメンテーションは、遊びや生活の中にある子どもの好奇心や探究心、活動に集中している瞬間などを写真とコメントで記録するものとして紹介されています。
大切なのは、単に「何をしたのか」だけを記録するものではないということです。
たとえば、
「今日は砂場で遊びました」
という記録。
これでも、その日の活動はわかります。
でも、子どもたちをもう少し見てみると、
「この砂、固まらない!」
「水を入れたらどうなる?」
「こっちから流してみよう!」
と、いろいろなことを考えているかもしれません。
最初は一人で始めた遊びに友だちが加わり、何度も試しながら方法を変えていくこともあります。
そこには、
発見する → 不思議に思う → 試してみる→ 友だちと考える→ また試してみる
という子どもたちの物語があります。
ドキュメンテーションでは、こうした結果だけでは見えにくい「育ちや学びのプロセス」を写真と言葉で見えるようにしていきます。
おたよりや連絡帳とは何が違う?
おたよりや連絡帳にも、園での出来事を家庭へ伝える大切な役割があります。
一方、ドキュメンテーションでは、
「何をしたか」だけではなく、「そのとき子どもに何が起きていたのか」
に目を向けます。
「散歩に行きました」
という活動の報告から、
「小さな虫を見つけた○○ちゃん。最初は少し離れて見ていましたが、友だちが『丸くなった!』と声をあげると、すぐそばまで近づいて一緒にしゃがみ込みました」
という子どもの物語へ。
何気ない一日の中にある「育ち」を見つけていくことが、ドキュメンテーションの大きな特徴です。

2.なぜ今、保育ドキュメンテーションが注目されているの?
ドキュメンテーションが注目される背景のひとつに、日々の保育を記録し、振り返り、次の実践につなげていくことの重要性があります。
厚生労働省の「保育所における自己評価ガイドライン(2020年改訂版)」では、保育士等が子どもの理解を基盤に保育を振り返り、自らの保育の良さや課題を捉え、次の保育に活かしていくという考え方が示されています。
つまり、記録は「残したら終わり」ではありません。
子どもの姿を見る。 →振り返る。 → 気づく。 → 次の保育を考える。
この循環が大切です。
ドキュメンテーションは、写真と言葉を使うことで、この振り返りを具体的に行いやすくする方法のひとつだと考えられます。
そして、難しく考える必要はありません。
一枚の写真を見ながら、
「このとき、この子は何を考えていたんだろう?」
と考える。
そこから始めることができます。

3.写真を見返すと、保育がもう一度おもしろくなる
保育中の先生は大忙しです。
子どもたちと一緒に遊びながら、安全にも気を配り、あちらこちらから聞こえてくる「先生!」にも応えています。
だから、その瞬間には気づかなかったことが、あとから写真を見ることで見えてくることがあります。
「あれ?この子、ずっと友だちのやり方を見ていたんだ」
「このときの一言から、遊びが変わったんだ」
「最初は一人だったのに、いつの間にかみんなで作っている」
写真は、ほんの一瞬を切り取ったものです。
でも、その一枚をじっくり見ると、保育中には通り過ぎていた子どもの表情や手の動き、友だちとの関係が見えてきます。
そして、
「この子は、このとき何を考えていたんだろう?」
と考えてみる。
ドキュメンテーションは、単に「今日あったことを記録する作業」ではありません。
子どもたちのおもしろさに、もう一度出会う時間でもあるのです。
4.ドキュメンテーションで生まれる4つの嬉しい変化
子どもの「できた」だけではない育ちが見える
完成した作品だけを見ると、
「上手にできたね」
で終わってしまうかもしれません。
でも、その途中を見てみると、
何度もやり直していた。
友だちの方法をじっと観察していた。
途中からやり方を変えた。
困っている友だちを手伝っていた。
そんな姿が見えてくることがあります。
大切なのは、「できた・できなかった」だけではありません。
その子が何に興味を持ち、どう考え、どう変化していったのか。
写真と言葉で振り返ることで、結果だけでは見えにくい子どもの育ちに気づきやすくなります。
先生同士の会話がもっとおもしろくなる
一枚の写真を先生同士で見てみると、おもしろいことが起こります。
「この子、こんなことしていたんだ!」
「そうそう。この前も似たような遊びをしていたよ」
「もしかしたら、今これに興味があるのかな?」
同じ写真を見ても、気づくことは人それぞれです。
一人では気づかなかった子どもの姿が、別の先生の言葉から見えてくることがあります。
そして、
「じゃあ明日は、こんな素材を置いてみようか」
「この遊び、もう少し続けてみたいね」
と、振り返りが次の保育計画や環境づくりにつながっていきます。
保護者にも「園でのわが子」が見えてくる
保護者から、
「『今日何したの?』と聞いても、『わすれた!』しか言ってくれなくて(笑)」
と言われたことはありませんか?
そんなときにも、写真が一枚あるだけで会話は変わります。
「これ何してるの?」
「○○ちゃんと作ったんだよ!」
「へえ!どうやって作ったの?」
園での経験が、家庭での会話へつながっていきます。
保護者にとってもうれしいのは、完成した作品を見ることだけではありません。
「こんなことに夢中なんだ」
「こんな表情をしているんだ」
「お友だちとこんなふうに関わっているんだ」
家庭とは違うわが子の姿を知ることも、大きな喜びです。
実際、神戸大学附属幼稚園で行われた「おうちえん」の実証研究では、ICTを活用したドキュメンテーションによって、園と保護者の双方向的な関係づくりの手段が増えることや、保護者が園生活での子どもの姿をより深く理解することが確認されています。
子ども自身も振り返ることができる
ドキュメンテーションは、大人だけが見るものではありません。
子どもたちと一緒に写真を見返してみるのもおすすめです。
「これ昨日作ったやつ!」
「このあと壊れちゃったんだよね」
「今度はもっと大きくしよう!」
昨日の経験を振り返ることで、
「次はこうしたい!」
が生まれることがあります。
記録したら終わりではありません。
記録したものから、また次の遊びが始まる。
そこにも、ドキュメンテーションのおもしろさがあります。
5.こんな残し方も!ひとつの園で見つけた6つのドキュメンテーション
ここまで、ドキュメンテーションの考え方や、そこから生まれる変化についてご紹介してきました。
では、実際の園では、どのようなドキュメンテーションが作られているのでしょうか。
先日、ある園を見学させていただいたときのことです。
園内を歩いていると、壁や保育室のさまざまな場所で、たくさんのドキュメンテーションに出会いました。
写真と文章で一つの出来事を丁寧に残したもの。
子どもの試行錯誤を、何枚もの写真で追いかけたもの。
スケッチブックに写真と言葉を書き足していくもの。
子どもの興味や環境との関係を、マップのように広げたもの。
活動の変化と一緒に、壁面へどんどん記録が加わっていくもの。
写真の枚数も、文章の量も、見せ方も、本当にさまざまです。
私も最初は、
「こんなにいろいろな残し方があるんだ!」
と驚きました。
でも、さらに驚いたことがあります。
これから紹介する6つのドキュメンテーションは、すべて同じ園で作られたものです。
いろいろな園から事例を集めたわけではありません。
ひとつの園の中で、これだけ多様なドキュメンテーションが生まれていました。
なぜ、同じ園なのに、こんなに記録の形が違うのでしょうか。
その答えを考えながら、実際の6つのドキュメンテーションを見てみましょう。
① 一つの出来事を残す「エピソード型」

一つひとつの出来事を写真と文章で記録。同じ大きさで並べても、そこに残される子どもたちの物語はそれぞれ違います。
「いねかり」
「屋根が落ちてきた!」
「海賊船のお宝どこいった?」
「ボンドができない!」
タイトルを見るだけでも、
「何があったんだろう?」
と、ちょっと読みたくなりませんか?
たくさんの写真を使わなくても、一つの場面をじっくり見つめることで、そのときの子どもの姿を深く残すことができます。
大きな写真と文章を組み合わせ、一つの場面を丁寧に振り返る方法もあります。

② 試行錯誤を追いかける「プロセス・時系列型」

写真を順番に追っていくと、完成したものだけでは見えない子どもの試行錯誤が伝わってきます。
写真を見ると、
まず土を丸めて、
別の土をかけて、
さらに丸めて、
水につけて……。
子どもが自分なりに考え、試している様子が順番に残されています。
完成したものだけを撮影したら、
「砂場でバスボムを作りました」
で終わっていたかもしれません。
でも、その途中を残してみると、
「こんなことを考えていたんだ!」
が見えてきます。
「何ができたか」ではなく、
「どうやってそこにたどり着いたのか」
を見るドキュメンテーションです。
③ 遊びをじっくり追いかける「プロジェクトブック型」

写真と手書きの言葉で一つの遊びを記録。ページをめくれば、それまでの遊びにも戻ることができます。
大きなスケッチブックに写真を貼り、
「お皿にのせる食材探し」
「食材にしたいものを集めて、盛る!」
と、活動の流れが手書きされています。
きれいに整ったレイアウトにすることだけが、ドキュメンテーションではありません。
手書きの文字や吹き出しからは、
「こんなことがあった!」
と先生が誰かに伝えたくなった気持ちまで伝わってくるようです。
④ 興味や環境のつながりを見る「マップ・関係図型」

写真だけでなく、保育室の平面図や先生の気づきも一緒に。子どもの行動と環境との関係を考えていきます。
写真、保育室の図、先生のメモ、気づいたこと。
さまざまな情報が、一枚の大きな紙の上に広がっています。
これは「今日何をした」という記録というより、
「この子たちは今、どんなことに興味を持っているんだろう?」
を先生たちが考えた跡のようにも見えます。
「この場所によく入っている」
「狭い空間が好きなのかな?」
「環境をこう変えたらどうなる?」
気づいたことを書き込み、環境を変え、また子どもの姿を見る。
一度作って終わりではなく、その後の子どもの姿を見ながら更新。先生たちの考えの変化も残されています。
ドキュメンテーションは子どもの記録であると同時に、先生たちが保育を考えた記録でもあることがわかります。
⑤ 活動と一緒に成長する「発展・追記型」

新しい遊びや出来事が生まれるたびに、写真や言葉を書き足していく壁面。子どもたちの活動と一緒に記録も育っていきます。
写真が増える。
子どもの言葉が増える。
先生の気づきが増える。
遊びが変われば、また記録が増えていく。
一枚の「完成した掲示物」を作るのではなく、子どもたちの活動と一緒にドキュメンテーションそのものが変化していきます。

春から夏へ。
遊びの広がりを継続して残していくことで、以前の出来事と今の遊びとのつながりも見えてきます。
⑥ 日常の中に置いておく「環境一体型」

子どもたちが生き物を観察する場所に、その活動の記録も掲示。ドキュメンテーションが日々の保育環境に自然に溶け込んでいます。
大きな壁面を作らなくてもいい。
生き物を飼育している場所のすぐそばに、そのときの活動の写真や言葉を置いておく。
子どもが生き物を見る。
以前の自分たちの活動を見る。
そして、また生き物を見る。
遊びと記録が同じ場所にあることで、過去の経験と今の興味が自然につながります。
「ドキュメンテーションを始めるなら、大きなものを作らなくちゃ」
と考える必要はありません。
こんなふうに、いつもの保育の中にちょっと記録を置いてみるところから始める方法もあります。
6つのドキュメンテーションは、すべて同じ園で生まれたものでした。
形式を統一するのではなく、子どもの姿や先生が伝えたいことに合わせて、残し方そのものが変わっていく。
では、6つを並べてみると、どんなことが見えてくるのでしょうか。
6つを見比べて気づいたこと
改めて6つを並べてみると、同じ園で作られたとは思えないほど、それぞれ表情が違います。
でも、この園の先生たちが、
「今日はエピソード型にしよう」
「次はマップ型で作ろう」
と、最初から形式を選んでいるわけではないのだと思います。
ある日は、
「この子のこの一言を残したい」
と思う。
ある日は、
「遊びがここまで変わってきた過程を残したい」
と思う。
またある日は、
「この子たちは今、何に興味を持っているんだろう?」
と先生同士で考えたくなる。
残したい子どもの姿が違えば、それを表す記録の形も自然と変わっていく。
この園の6つのドキュメンテーションから、そんなことが伝わってきました。
ドキュメンテーションを始めようとすると、
「写真は何枚必要?」
「文章はどれくらい書けばいい?」
「どんなレイアウトにすればいい?」
と、「正しい作り方」が気になるかもしれません。
でも、大切なのは、
「どんなドキュメンテーションを作ろう?」
から始めることではなく、
「今日、子どものどんな姿が心に残っただろう?」
から始めることなのかもしれません。
子どもの姿を起点にすれば、ドキュメンテーションの形はひとつでなくていい。
むしろ、これだけ自由でいい。
そんなことを、この園の実践が教えてくれました。
そして、これだけ多様な記録を見ているうちに、私には一つ、どうしても聞いてみたいことが出てきました。
6.「こんなに記録を作るの、大変じゃないですか?」
園内には、写真とコメントをA4にまとめたもの、スケッチブックに残したもの、マップのように広げたもの、活動とともに壁へ書き足していくものなど、さまざまなドキュメンテーションがありました。
どれも子どもたちの姿を丁寧に見つめた記録です。
素敵だなと思う一方で、正直なところ、こんなことも思いました。
「これだけたくさんの記録を作るのは、大変なのでは?」
そこで、先生に聞いてみました。
すると返ってきたのは、とても印象的な言葉でした。
「保育を振り返りながら記録を残していくのが、楽しくてしょうがないんです」
思っていた答えとは、少し違いました。
先生にとってドキュメンテーションは、「やらなければならない記録」ではなかったのです。
写真を見返しながら、
「このとき、こんなことを言っていたね」
「ここから遊びが変わったんだ」
「この子、実はこんなところを見ていたんだね」
と、その日の保育にもう一度出会う。
そして、
「この写真も残したいね」
「このあと、どうなったんだっけ?」
「明日はこんなものを置いたらどうするかな?」
と、先生同士で話していく。
記録を作る時間そのものが、子どもたちのおもしろさを再発見する時間になっていたのです。
この言葉を聞いたとき、園内にあった6つのドキュメンテーションが、なぜあれほど多様だったのか、少し分かったような気がしました。
子どもの姿がおもしろいから、残したくなる。
残した記録を見返すと、また新しいことに気づく。
その気づきを誰かと話すと、
「じゃあ明日はどうしよう?」
と、次の保育が楽しみになる。
だから、記録の形も子どもたちの姿と一緒に変わっていくのかもしれません。
もちろん、すべての園が同じように時間を使えるわけではありません。
人員体制や日々の業務によって、
「やってみたいけれど、なかなか時間が取れない」
「毎日ここまで作り込むのは難しい」
という園もあるでしょう。
だから、この園と同じものを作る必要はありません。
写真一枚と短いコメントでもいい。
スマートフォンやタブレットを使ってもいい。
先生同士で写真を見ながら、数分話してみるところからでもいい。
大切なのは、立派な記録を作ることではなく、
子どもの姿をもう一度見て、「おもしろいな」と感じる時間を持つこと。
その園、その先生たちに合った方法で、無理なく続けていければいいのだと思います。
先生自身が、子どもの姿を発見することを楽しんでいる。ここに、この園でドキュメンテーションが続いている理由があるように感じました。
7.子どものワクワクと先生のワクワクが、次の保育をつくる
「保育を振り返りながら記録を残していくのが、楽しくてしょうがないんです。」
この先生の言葉は、今回の見学の中でも特に心に残りました。
なぜなら、そこには子どもだけではなく、先生自身の「ワクワク」があったからです。
子どもが、
「なんだろう?」
「やってみたい!」
「もう一回!」
と夢中になる。
その姿を見た先生も、
「おもしろい!」
「そんなことを考えていたんだ!」
「明日は何を置いてみよう?」
とワクワクする。
先生が環境を少し変えたり、新しい素材を用意したりすると、それを見つけた子どもたちから、また新しい遊びが始まる。
そして、その姿を見て、先生もまた新しいことに気づく。
子どものワクワクが、先生のワクワクにつながる。
先生のワクワクが、次の保育につながる。
そして、そこからまた子どもの新しいワクワクが生まれる。
ドキュメンテーションは、この循環を支える一つの方法なのかもしれません。
写真を撮ることで、子どもの姿を立ち止まって見る。
写真を見返すことで、その場では気づけなかったことを発見する。
先生同士で語り合うことで、
「この子は何を考えていたんだろう?」
「じゃあ次はどうしよう?」
と新しいアイデアが生まれる。
つまりドキュメンテーションは、終わった保育を記録するためだけのものではありません。
今日の子どもの姿から、明日の保育を考えるものでもあるのです。
この循環に感じた「共主体」という視点
子どもが「おもしろい!」と夢中になる。
その姿を見て、先生も「おもしろい!」と心を動かされる。
そして先生が「明日はこんな環境をつくってみよう」と働きかけることで、子どもからまた新しい「やってみたい!」が生まれる。
今回この園で見たのは、どちらか一方が保育をつくるのではなく、子どもと先生がお互いに影響し合いながら、次の保育が生まれていく姿でした。
私は、そこに「共主体」という視点を感じました。
ドキュメンテーションは、その関係を目に見える形にしてくれます。
写真や言葉を通して子どもの姿を振り返ることで、
「この子は何をおもしろいと思っているんだろう?」
「じゃあ、明日はどうしてみよう?」
と、先生の次のワクワクが生まれる。
子どものワクワクと先生のワクワクが重なりながら、次の保育へつながっていく。
今回この園で見た6つのドキュメンテーションから、そんな保育の循環が見えてきました。

8.時間をかけて作るのも、シンプルに残すのもいい
この園のように、
じっくり写真を選ぶのが楽しい。
先生同士で話しながら壁面を作るのがおもしろい。
スケッチブックをめくりながら以前の遊びを振り返るのが楽しい。
そんな時間も、とても大切です。
一方で、すべての園が同じように時間を使えるわけではありません。
人員体制や日々の業務によって、
「やってみたいけれど、なかなか時間が取れない」
「毎日大きな掲示物を作るのは難しい」
という園もあるでしょう。
だからこそ、ドキュメンテーションには一つの正解があるわけではありません。
写真1枚+文章でもいい。
写真を順番に並べてもいい。
スケッチブックでもいい。
マップにしてもいい。
壁にどんどん書き足してもいい。
ICTを使ってもいい。
大切なのは、
「きれいなドキュメンテーションを作ること」ではなく、「子どもの姿をおもしろがること」。
その園、その先生たちが楽しみながら続けられる方法を見つけることが大切です。
9.初めてなら「撮る・選ぶ・書く・共有する」から
「おもしろそう。でも、何から始めればいい?」
そんな先生は、難しく考えなくても大丈夫です。
まずは、
撮る → 選ぶ → 書く → 共有する
から始めてみましょう。
STEP1 撮る
子どもが夢中になっている瞬間を撮ってみます。
カメラ目線でポーズをとってもらう必要はありません。
何を見ている?
どこに手を伸ばしている?
誰と関わっている?
どんな表情をしている?
先生自身が、
「なんだか、この瞬間おもしろいな」
と思ったら、まず一枚。
STEP2 選ぶ
たくさん撮ったら、
「この瞬間を伝えたい!」
と思う写真を選びます。
完璧な構図でなくても大丈夫です。
先生自身が「おもしろい」と感じた一枚を探してみてください。
STEP3 書く
写真だけではわからないことを、少しだけ言葉にしてみます。
「砂場で遊びました」
ではなく、
「最初は一人で水を運んでいた○○ちゃん。『こっちにも入れて!』という友だちの声をきっかけに、いつの間にかみんなで川づくりが始まりました」
と書いてみる。
子どもの言葉をそのまま入れるのもおすすめです。
STEP4 共有する
作ったものは保護者へ届けるだけでなく、ぜひ先生同士でも見てみてください。
「いい写真だね」
で終わらず、
「このとき、この子は何を考えていたんだろう?」
と話してみる。
そこから、
「じゃあ明日は?」
が生まれるかもしれません。

10.コメントを書くときは「やったこと」より「変化」を探す
ドキュメンテーションを始めると、多くの先生が悩むのが、
「何を書けばいいの?」
ということです。
そんなときは、活動を説明しようとするよりも、子どもの変化を探してみてください。
「散歩に行きました」
よりも、
「虫の世界に入り込んだ20分」
「砂場で遊びました」
よりも、
「水を入れたら、何かが変わった!」
タイトルだけでも、少し先を読みたくなります。
迷ったときは、
何に興味を持った?
どんなことを試した?
友だちとどう関わった?
最初と最後で何が変わった?
と写真に問いかけてみます。
そしてもう一つ、
「この姿を見て、自分は何を感じた?」
も考えてみてください。
子どもの姿だけではなく、それを見た先生の発見やワクワクも、次の保育につながる大切な手がかりです。
11.振り返ったら、「明日はどうしよう?」へ
ここまでが記録。
でも、ドキュメンテーションのおもしろさは、その先にもあります。
たとえば、泥遊びの写真を見ながら、
「この子たち、泥そのものより、水が流れることがおもしろいんじゃない?」
と先生が気づいたとします。
そこから、
「じゃあ明日は樋を置いてみようか」
「バケツも増やしてみよう」
「高いところから流せるようにしたらどうなるかな?」
と次の保育を考えてみる。
翌日、子どもたちは先生の想像とはまったく違う遊び方をするかもしれません。
それもまた、おもしろい。
子どもがワクワクする →先生が気づき、ワクワクする → 振り返り、語り合う → 「明日は?」を考える → 環境や関わりが変わる → 子どもから、また新しいワクワクが生まれる
ドキュメンテーションは、過去を残すだけのものではありません。
今日の子どもの姿から、明日の保育を考えるものでもあるのです。
厚生労働省の自己評価ガイドラインでも、「振り返ること」と「次の保育に活かすこと」がつながっています。
そう考えると、ドキュメンテーションは「記録業務」というより、
保育をもっとおもしろくするための道具
と捉えることもできるのではないでしょうか。
12.先生たちにも、明日の保育を楽しみにしてほしい
私たちは、先生たちにドキュメンテーションをたくさん「作ってほしい」わけではありません。
楽しみながら保育を振り返ってほしい。
「今日のあの姿、おもしろかったね」
と先生同士で話してほしい。
そこで見つけた子どもの姿を、保護者とも共有してほしい。
そして、その気づきを次の保育計画や環境づくりにつなげながら、
「明日はどうなるんだろう?」
と、先生自身にも次の保育を楽しみにしてほしい。
子どもだけがワクワクするのではなく、先生もワクワクする。
その二つが重なり合いながら、保育が変化していく。
そんな毎日が、ドキュメンテーションをきっかけに少しずつ増えていったら素敵だと思います。
13.時間が取れないときは、ICTもひとつの選択肢
もちろん、
「やってみたいけれど、なかなか作成時間が取れない」
という園もあります。
そんなときは、すべてを紙で作ることにこだわる必要はありません。
スマートフォンやタブレットなどを使い、
撮る → 写真を選ぶ → 言葉を添える → 共有する
という方法もあります。
ICTの良さは、単に「作業を早くする」ことだけではありません。
大切なのは、子どもの姿について考えたり、先生同士で語り合ったりする時間をどう作るかです。
紙にじっくり書きながら考える方が合っている園もある。
先生同士で壁面を作りながら語り合うのが楽しい園もある。
ICTで写真を共有し、それを見ながら話す方法が合う園もある。
それぞれの園に合った方法でいいのです。
14.「おうちえん」で、子どもの育ちを写真と言葉に
「おうちえん」は、子どもたちの日常を写真や動画、コメントで記録し、保護者と共有できるドキュメンテーションツールです。
スマートエデュケーションは2020年9月から、神戸大学大学院人間発達環境学研究科の北野幸子教授らの研究グループ、神戸大学附属幼稚園と共同で、ICTを活用したドキュメンテーションツール「おうちえん」の機能強化に関する研究に取り組みました。

神戸大学附属幼稚園で行われた実証研究では、「おうちえん」を活用することで、
園と保護者との双方向的な関係づくりの手段が増えること
そして、
保護者が園生活での子どもの姿をより深く理解できること
などが確認されています。
北野教授の専門分野は保育学・乳幼児教育学で、現在、神戸大学大学院人間発達環境学研究科の教授を務めています。
私たちが「おうちえん」で大切にしているのも、単に写真を配信することではありません。
写真の向こうにある「子どもの育ち」を、どう見つけ、どう伝えるか。
どんな写真を撮る?
どんな言葉を添える?
子どものどんな姿に注目する?
先生同士でどう振り返る?
保護者とどう共有する?
そして、
「明日はどんな保育をしてみよう?」
そんなことを先生たちが楽しみながら考えられるドキュメンテーションを目指しています。
15.「やってみたい!」と思った先生へ
ここまで読んで、
「ドキュメンテーション、ちょっとやってみたいかも」
と思っていただけたでしょうか。
でも、実際に始めようとすると、
「どんな写真を撮ればいい?」
「コメントには何を書けばいい?」
「“育ち”って、どうやって見つけるの?」
「他の園ではどんなふうに作っている?」
と、新しい疑問も出てくると思います。
そこで、初めてドキュメンテーションに取り組む先生に向けた無料資料、
『はじめてのドキュメンテーション』
をご用意しました。

この資料では、
そもそもドキュメンテーションって何?
始めることで生まれる嬉しい変化
「撮る・選ぶ・書く・共有する」4ステップ
子どもの育ちが伝わるコメントを書く5つのコツ
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などを、初めて取り組む先生にもわかりやすくまとめています。


最初から立派なものを作らなくても大丈夫です。
写真一枚からでも、始められます。
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まとめ|子どものワクワクから、先生のワクワクへ
今回、実際の園でさまざまなドキュメンテーションを見せてもらいました。
写真と文章で、一つの出来事を残したもの。
子どもの試行錯誤を順番に追ったもの。
スケッチブックに残したもの。
子どもの興味や環境との関係をマップにしたもの。
活動が進むたびに、どんどん書き足されていくもの。
そして、いつもの保育環境の中に、さりげなく置かれたもの。
形は、本当にさまざまでした。
でも、その根っこにあったのは、
「この子たち、おもしろい!」
という先生たちの気持ちでした。
子どもがワクワクする。
その姿を見て、先生もワクワクする。
みんなで振り返る。
語り合う。
「明日はどうしよう?」と考える。
そして翌日、子どもたちからまた新しい「おもしろい!」が生まれる。
子どものワクワク+先生のワクワク。
私は今回の園を見て、そんな「共主体」の保育を感じました。
記録を残すことが目的ではなく、
記録することで、子どもを見ることがもっと楽しくなる。
子どもを見ることが楽しくなれば、明日の保育を考えることも、きっともっと楽しくなる。
まずは明日の保育で、
「なんだか、この瞬間いいな」
と思ったときに、一枚写真を撮るところから始めてみませんか?








